「友人が今度、どうしても紹介したい人がいると食事会に行くことになった」「知人から半ば強引に高額な商品の購入を勧められた」
もしこのように誘われた方は気をつけてください。
ケースによってはマルチ商法の違法行為に該当するからです。
ここではマルチ商法について、違法行為を犯すマルチ業者のやり口、実際に起きたケースなどお話しています。
当記事を読むと、あやしいセールスやしつこい勧誘にしっかり対処できる知識が身に付きますよ。
目次:
- 高額な水素風呂を買わされるのは詐欺?
- マルチ商法は詐欺(違法)ではない
- マルチ商法が違法なケース:商品や勧誘者のルール違反
- マルチ商法の企業が業務停止命令を受けた実例
- 高額な水素風呂を勧められた時の断り方
- あとがき
1.高額な水素風呂を買わされるのは詐欺?
水素風呂の情報を調べていたら、Yahoo知恵袋にとても気になる問い合わせが投稿されていたのを拝見しました。
友人と友人のお姉さんにY●SAの商品(水素風呂)を強く勧められています。
価格は50万円。
婦人科系の病気も治るし、ダイエットにもなるとのことですが、私的には価格が高いので断るつもりで昨日行ったのに、みんな話が上手でクレジットの審査まで話が進みました。
引用元:Yahoo知恵袋「健康、美容とファッション > ダイエット」
質問者のアキコさん(仮名)は50万円もする水素風呂生成器のセールスを受けて、最初は断ろうとしました。
ところがクレジットの審査が通り、すると友人とその姉から
自営業の人とかでも審査通らないことあるから(アキコさんは当時、アルバイト)、通ったことが奇跡。これは運命だと思って買うべき
とうまいこと丸め込められ、彼女は契約書を書いたというのです。
ただ運が良かったのが、その日は銀行印を持っていなかったため、後日会うことになりました。
アキコさんは「どうしたらいいと思いますか?」といい緊迫感の伝わる悩みでした。
あまりにも高額な製品なので料金を調べたところ、フリマサイトで過去に売られたY●SAの水素風呂製品を発見しました(ちなみに公式サイトに料金表示はなし)。
どうも水素風呂が 50万円というのは事実のようです。
(株)Y●SAのハッピーバスタイムです。
5月に購入、新品未使用です。
箱から出していません。
定価540000円
9月から65万円になるそうです。
引用元:メルカリ「Y●SA ハッピーバスタイム 新品 水素風呂」
水素お風呂は本当に効果スゴイです。
3カ月待ちの大人気の今話題の水素バスなので、メッセージ下さい。
水素、マイクロバブルに➕重炭酸タブレットを入れると効果アップ、代謝アップします。
54万→50万になるので、入金は25万×②になります(^o^)
確実に購入されたい方のみ、ご予約受付ます。メッセージ下さい。
引用元:ラクマ「Y●SA 水素お風呂 予約」
個人的に筆者は「9月から65万円」というのが気になってさらに情報を探しました。
すると、ある美容系ブログでは2017月7月に書いた記事に「我が家にも80万円の水素風呂が到着!」という記載を見つけました。
どんどん値上げをしているように筆者は感じました。
果たして高額な水素風呂を販売することは詐欺なのでしょうか?
2.マルチ商法は詐欺(違法)ではない
そもそもマルチ商法とネズミ講の違いが分からなかった筆者ですが(恥!)、マルチ商法は合法的なビジネスであり、ネズミ講が違法なのだそうです。
- マルチ商法:
ルール(=特定商取引法)に則ってピラミッド型ビジネス(=連鎖販売取引)を行う - ネズミ講:
ボスだけが儲かる仕組みで、金銭の配当のみを目的とした商法。「ネズミ」とはネズミ算式に増幅することの例え
ネズミ講は商品やサービスを持たず金品のみを扱い、会員を増やして結局は大ボスだけが儲かるビジネス。
過去には天下一家の会事件、グランドキャピタル事件、年金たまご事件などが起きています。
一方、マルチ商法は商品やサービスを扱って仲間(=会員数)を増やしていき、“頑張って結果を出した会員が儲かる仕組み”である、言わば連鎖販売取引です。
「連鎖販売取引」をもう少し紐解くと、商品の販売実績や新規会員の獲得数に応じて報酬が増やせるビジネスであり、販売員・勧誘員などの組織スタッフがピラミッド式に拡大していくのが特徴です(下図イメージ参照)。
画像引用元:熊本県宇城市 公式サイト「学生に広がるマルチ商法的勧誘に注意!」
ただこのマルチ商法ですが、やり方がほとんどネズミ講と同じためなのか、トラブルや被害も続出しているようです。
3.マルチ商法が違法なケース:商品や勧誘者のルール違反
マルチ商法が合法ならなぜイメージが圧倒的に悪いのでしょうか?
国の管轄である国民生活センターの情報によると毎年、1万件以上もマルチ商法に関する相談が入って来るようです(2017年10月現在、参照元:マルチ取引)。
また消費者庁の調べによりますと、20代以下の若年層がマルチ商法の被害に最も多く遭っています。
(マルチ商法の被害に遭った)契約者の年齢層については、20 代以下が全体の 26.3%と他の年齢層の2倍程度となっており、最も多くを占めている。
引用元:消費者庁「いわゆるマルチ取引の被害に遭わないための5つのポイント」
実際に被害やトラブルが起きているとのことですが、まずはマルチ商法の違法なケースについて見ていきましょう。
1つめは商品やサービスの“価格”について。
連鎖販売取引の商品やサービスの価値が、価格と大きくかけ離れているような場合、マルチ商法と称してビジネスを行っていても無限連鎖講(=ネズミ講)と判断されることもあるようです。
※参考情報:消費者庁「無限連鎖講の防止に関する法律」
さらに販売員や勧誘員の逸脱したセールスも違法です。
例えば次のような勧誘などはルール(=特定商取引法)に反しているため違法となります。
「あなたに合わせたい人がいるの。今度一緒に食事に行きましょう!」
→1.氏名などの明示(法第33条の2)、2.禁止行為(法第34条)に抵触
これは名前を伏せて言わないことと、勧誘目的を言わないで会う約束を取ることが違反行為になります。
「少し高いけど紹介者を集めれば紹介料で誰でも簡単に稼げるよ」
→4.誇大広告などの禁止(法第36条)に抵触
多くのマルチ商法がそうなのですが、簡単に儲けることは まず難しいでしょう。
「簡単に稼げる」「たくさん儲けられる」などとはこの「誇大広告などの禁止」に触れてしまうので違反行為です。
ちなみに詳しいルールについて、消費者庁が運営するサイト『特定商取引法ガイド 』の「連鎖販売取引」で閲覧することができます。
マルチ商法は合法ですが、上記のようにルール違反をした企業はないのでしょうか?
4.マルチ商法の企業が業務停止命令を受けた実例
先に結論を言いますと、マルチ商法で違反を犯した企業は存在し、多くは販売員の勧誘方法に問題があるようです。
2016年3月、『株式会社ナチュラリープラス』に対して消費者庁は、特定商取引法に基づく業務の一部停止命令を出しました。
ナチュラリープラスとは、マルチ商法をメインとした企業で1999年に設立。
年間売り上げ約200億円規模と一時期はマルチ商法業界のTOP10に君臨していた企業です。
消費者庁は2015年4月、ナチュラリープラスに立ち入り検査を実施して1年間、改善状況を見てきました。
残念ながら業務改善後も消費者からの苦情が止まず、消費者庁は処分を行ったと言います。
PIO-NET(パイオネット・消費生活センター及び国民生活センターが受付けた相談情報)の消費者の苦情は2013年度 191件、2014年度 247件、2015年度 158件と寄せられ、苦情全体の65%は女性が占めていました。
次の内容をご覧いただくと、先に解説したルール(=特定商取引法)に違反していることが分かります。
消費者庁によると、同社の勧誘者は勧誘の目的を明かさずに、知人などをセミナーや自宅に誘い出していた。
その際、「○○さんが新しくサプリメントの販売のお仕事を始めたみたいなので話を聞いてくれない?」、「1回、会ってやってくれない?」、「いい話があるから聞いてみない?もうかる話だから」などと話していた。
引用元:健康情報ニュース.com「消費者庁、特商法違反でナチュラリープラスに業務停止命令」
勧誘員の中には「会員になれば報酬を得ることができる」とあたかも確実に収益が上がるように話をしていたとか。
商品の1つに水素水『IZUMIO(イズミオ)』も扱っています。
この水素水の販売の際、「1カ月飲み続けるとどんな病気もよくなる」「心筋梗塞とか動脈硬化が治る」「がんにも効く」などと説明していました。
実はナチュラリープラスに限らず、数々のマルチ商法企業が業務停止命令を受けているのが実情です(参考情報:消費者庁「公表資料 2017年度」)。
さて、このようなマルチ業者からの勧誘にあなたならどのように答えますか?
最後に冒頭でご紹介したYahoo知恵袋の質問に対するベストアンサーをご紹介します。
5.高額な水素風呂を勧められた時の断り方
高額な水素風呂製品を勧められ、契約書を書いたが銀行印は押していないアキコさん。
この後、どのように対処することがベストなのでしょうか。
このお悩みに対して分かりやすく具体的な方法を提示したのがマミさん(仮名)でした。
ハッキリ言って、私は絶対に買わないという意志を持って断る以外に方法はありません。
そんな人間にはこっちがどう頑張ろうと売れません。
引用元:Yahoo知恵袋「健康、美容とファッション > ダイエット」
マミさん自身、過去に同じような仕事をされていたようです。
その時、断るのは申し訳ないとか、少しでも悩むような方を契約に持って行くのは難しくないようです(゜Д゜)!!
販売員は「毎月これだけ我慢するとこんなにも大きなメリットがある」「クーリングオフもあるから」と言葉巧みに契約に持ち込むようです。
その友人と縁が切れてもいいと腹をくくって電話で断るのが一番良いとのこと。
筆者はゾッとしたのですが、友人ではなく製品を説明する人がやっかいで、このような方は百戦錬磨の腕を持っているようです。
もし会おうもんなら契約して帰ってくるのが落ちなので、電話できっぱりと断る!が答えでした。
そしてマミさんは次の言葉で締めくくっていました。
相手が怒ろうが、嫌味を言われようが、泣きつかれようが電話で断るんです。
それ以外の方法はないです。
あとがき
Yahoo知恵袋の質問者のアキコさんは、結果的に水素風呂の製品を購入することなく無事だったようです。
もう、行ってはだめだと思い、電話で断りを入れました。
想像通り『一回お店に来て。みんな時間作ったんだから』と言われました。
彼女は「この友人と縁が切れても仕方がない」と決心して「もう行けません!」と伝えたそうです。
そして何とかキャンセルしてもらいました。
あなたも悪質なマルチ商法の被害に遭わないためにも消費者庁が注意喚起している分かりやすい資料の一部をご紹介します。
マルチ商法の被害を防ぐ5箇条
- 身近な人からの勧誘でも明確に断る!
- 安易に甘い言葉を信じて契約しない!
- 事業社への投資の勧誘を安易に信じない!
- 身近な人の様子に不審点があれば相談にのる!
- 困ったら消費生活センターにご相談を!
引用元:消費者庁「マルチ商法にご用心!!」
とは言うものの、真剣にマルチ商法に取り組んでいる方々が少し可愛そうに感じました。
自己利益の追求に猛進する心ない一部の会社のせいで、同業の企業・スタッフ・製品など全てのイメージを悪くしてしまうからです。